大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和45年(行ウ)109号 判決 1974年8月29日

神奈川県逗子市桜山七丁目三番一一号

原告

馬場数馬

同所

原告

馬場道子

同所

原告

馬場香苗

右両名訴訟代理人弁護士

馬場数馬

同県横須賀市上町三丁目一番地

被告

横須賀税務署長

阿部光信

右訴訟代理人弁護士

島村芳見

右指定代理人

丸森三郎

磯喜義

滝口正富

右当事者間の所得税更正処分取消請求事件について、当裁判所は、次のとおり判決する。

主文

原告らの請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

第一申立て

一  原告ら

(一)  被告が昭和四〇年三月一二日付をもつてした次の各処分を取り消す。

1 原告馬場数馬に対する昭和三六年分所得税についての更正処分および過少申告加算税賦課決定処分(ただし、いずれも東京国税局長の昭和四五年三月一一日付裁決による減額後のもの)

2 原告馬場道子に対する昭和三六年分所得税についての更正処分(ただし、被告の昭和四〇年六月一六日付異議決定定による減額後のもの)

3 原告馬場香苗に対する昭和三六年分所得についての更正処分(ただし、東京国税局長の昭和四五年三月一一日付裁決による減額後のもの)

(二)  訴訟費用は被告の負担とする。

二  被告

主文同旨

第二主張

一  原告らの請求原因

(一)  原告らはそれぞれ昭和三六年分所得税について別表(一)の(1)ないし(3)の各確定申告書記載のとおりの各確定申告を被告に対してしたところ、被告は同別表の(1)ないし(3)の各更正欄記載のとおりの各更正処分および過少申告加算税賦課決定処分(ただし、後者は原告馬場数馬に対してのみ)をした(以下、「本件各更正等処分」という。)。

本件各更正等処分に対する原告らの異議申立て、被告の異議決定、原告らの審査請求、東京国税局長の裁決は、それぞれ別表(一)の(1)ないし(3)の各異議申立て欄、各異議決定欄、各審査請求欄、各裁決欄記載のとおりである。

(二)  原告らの右各確定申告および本件各更正等処分においては、いずれも所得税法(昭和四〇年法律第三三号による改正前のもの。以下、同じ。)一一条の三にもとづき、原告馬場数馬を主たる所得者、原告馬場道子、原告馬場香苗および訴外馬場数馬を合算対象世帯員として、いわゆる資産合算の方法により課税標準および所得税額を算出したものであるが、被告は、昭和三六年中に主たる所得者である原告馬場数馬に確定申告にかかる所得以外に雑所得二、〇〇〇万円があつたとして本件各更正等処分(ただし、原告馬場数馬および原告馬場香苗の分については前記各裁決、原告馬場道子の分については前記異議決定による減額後のもの。以下、同じ。)をしたものである。

(三)  しかしながら、原告馬場数馬には昭和三六年中に確定申告にかかる所得があつたのみで、それ以外に雑所得二、〇〇〇万円はなかつたので、本件各更正等処分は違法である。

よつて、本件各更正等処分の取消しを求める。

二  請求原因に対する被告の答弁および主張

(一)  請求原因(一)、(二)の事実は認めるが、同(三)の事実は争う。

(二)  雑所得二、〇〇〇万円について

本件各更正等処分は、原告ら主張のように、昭和三六年中に主たる所得者である原告馬場数馬に確定申告にかかる所得以外に雑所得二、〇〇〇万円があつたとして、これを確定申告にかかる課税標準たる総所得金額に加算してしたものであるところ(原告馬場道子および原告馬場香苗の分については、その課税標準は各確定申告のとおりであるが、いわゆる資産合算の方法により計算をするため、主たる所得者である原告馬場数馬の所得金額の増加に伴い所得税額が増加したものである。)、原告馬場数馬に昭和三六年中に雑所得二、〇〇〇万円があつたことは次に述べるとおりである。

1 訴外都筑一江は、昭和三五年八月ごろ同人所有にかかる横浜市中区花咲町一丁目二二番二、宅地二五一・〇八坪(以下、「本件土地」という。)の売却方を、同人の手取金額が約七、〇〇〇万円となるようにしてくれればそのほかのことは一切任せるとして、原告馬場数馬に委任した。

2 そこで、原告馬場数馬は、都筑一江の代理人として本件土地を訴外陳炎山に代金一二、九八〇万円で売却した。

3 ところで、都筑一江は前記のとおり同人の手取金額を約七、〇〇〇万円にしてくれればよいとのことであつたので、原告馬場数馬は、同人に対し本件土地の売却代金を九、四八〇万円(内訳、売主の手取額六、九三〇万円、土地占有者への立退料二、五五〇万円)と報告し、その差額三、五〇〇万円を昭和三五年中に一、二〇〇万円、昭和三六年中に二、三〇〇万円自己において取得した。買主陳炎山の支払金額、原告馬場数馬の受取金額、そのうち都筑一江への支払金額、立退者への支払金額、原告馬場数馬の取得した差額の明細は別表(二)記載のとおりである。

4 都筑一江と原告馬場数馬の本件土地売却の委任関係は、前記委任の趣旨からして、都筑一江が原告馬場数馬より本件土地の売却代金が九、四八〇万円であると報告を受け、立退料を差引き六、九三〇万円を受領したことにより、終了したものであつて、実際の売却代金一二、九八〇万円と右報告にかかる売却代金九、四八〇万円との差額三、五〇〇万円は原告馬場数馬の所得になつたものというべきである。都筑一江は、昭和三八年に至つて本件土地の売却代金が一二、九八〇万円であることを知つたが、前記報告にかかる売却代金との差額については何ら請求する意思のないことを原告馬場数馬へ通知しているのであつて、このことからも前記差額三、五〇〇万円は原告馬場数馬の所得になつたことが明らかである。

5 ところで、原告馬場数馬は弁護士を業とするものであるが、同原告が取得した前記差額三、五〇〇万円は弁護士業務から生じた所得ではなく、また、同原告所有の資産の譲渡による所得でもないので、所得税法九条一項一〇号に規定する雑所得の収入金額である。

6 したがつて、原告馬場数馬が取得した前記差額三、五〇〇万円のうち昭和三六年中に取得した二、三〇〇万円からその必要経費として同原告が訴外粘玉世に支払つた本件土地の売買の仲介手数料三〇〇万円を控除した二、〇〇〇万円が同原告の昭和三六年分の雑所得金額である。

7 よつて、右雑所得金額二、〇〇〇万円を加算してなされた本件各更正等処分は適法である。

三  被告の主張に対する原告らの答弁

被告の主張(二)の1の事実のうち、原告馬場数馬が都筑一江より本件土地の売却方の委任を受けたことは認めるが、その余は争う。右委任の内容は、本件土地をその占有者である訴外服部日出吉ほか二名に対する立退料をも含めて総額約一億二ないし三、〇〇〇万円で売却することにあつたものである。同(二)の2の事実は認める。同(二)の3の事実は争う。買主陳炎山の支払金額、原告馬場数馬の受取金額、そのうち都筑一江への支払金額、立退者への支払金額、仲介人への支払金額の明細は別表(三)記載のとおりであつて、本件土地の売却に関し原告馬場数馬には何ら雑所得の収入はなかつたものである。被告の主張(二)の4の事実は争う。もつとも、都筑一江が昭和三八年になつて原告馬場数馬に対し、本件土地の売買に関し都筑一江が受領したのは六、九三〇万円のみであり、それで異存はないのでそれ以上の金員を請求する意思のないことを通知してきたことは認めるが、右通知の内容は真実に反しており、右原告は別表(三)のC欄記載のとおり都筑一江に対し合計一〇、〇三〇万円を支払つているのである。被告の主張(二)の5のうち原告馬場数馬が弁護士を業としているものであることは認める。同(二)の6および7は争う。

第三立証

一  原告ら

甲第一ないし第三号証の各一ないし四、第四号証の一ないし三、第五号証の一ないし五、第六号証の一ないし三を提出。

証人小路益弘、同都筑剛、同新井治次の各証言および原告馬場数馬本人尋問の結果を援用。

乙第一ないし第四号証の成立は認めるが、その余の乙号各証の成立は不知。

二  被告

乙第一ないし第九号証を提出。

証人蕪木義明および同都筑一江の各証言を採用。

甲号各証の成立はいずれも認める。

理由

一  請求原因(一)、(二)の事実は当事者間に争いがない。

二  本件における唯一の争点は、昭和三六年中に主たる所得者である原告馬場数馬に確定申告にかかる所得以外に雑所得二、〇〇〇万円があつたかどうかであるので、この点について検討する。

(一)  原告馬場数馬が都筑一江より本件土地の売却方の委任を受けたこと、そこで、同原告が都筑一江の代理人として本件土地を陳炎山に代金一二、九八〇万円で売却したこと、右代金のうち右原告は陳炎山より昭和三五年中に合計五、〇〇〇万円、昭和三六年五月一〇日に六、三三〇万円の支払いを受けたこと、右原告は昭和三五年中に支払いを受けた右五、〇〇〇万円のうちから、少なくとも、二、九〇〇万円を都筑一江へ支払い、九〇〇万円を本件土地からの立退者へ支払い、また、昭和三六年五月一〇日に支払いを受けた六、三三〇万円のうちから、少なくとも四、〇三〇万円を同日都筑一江へ支払い、さらに、粘玉世へ本件土地売却の仲介手数料として三〇〇万円を支払つたこと、陳炎山は前記売買代金のうち一、六五〇万円を昭和三六年四月三〇日本件土地からの立退者へ直接支払つたこと、以上の事実は当事者間に争いがない。

(二)  原告らは、原告馬場数馬は都筑一江より本件土地の売却代金を本件土地の占有者に対する立退料を含めて総額約一億二ないし三、〇〇〇万円にしてほしいということで本件土地の売却方の委任を受けたものであり、また、昭和三六年五月一〇日には右原告は都筑一江に対し前記四、〇三〇万円のほか二、〇〇〇万円をも(したがつて、合計六、〇三〇万円)支払つた旨主張し、右原告は本人尋問の際右主張に副う供述をし、また、成立に争いがない甲第四号証の三および乙第四号証によれば、右原告が都筑一江にあてて昭和三八年七月二日付で作成したという書面には、「貴殿の右取引に対する要求は立退処理費を別とし手取り金を壱億壱千万円ということであつたのが最終的に壱億七百万円で承服されたのではないですか、而もそれは昭和三十八年壱月陳炎山に対する仮登記の為めの印鑑証明住民票抄本手交の際同意されたのではないでしたか。(中略。昭和三六年五月一〇日)受渡を了した金額は小切手四千万円の外現金で弐千五百五拾万円であり、之はそのまゝ御渡したものであります。」と記載されていることが認められる(もつとも、右原告は、本人尋問の際、都筑一江へ送つた書面では右二、五五〇万円を二、〇三〇万円に訂正してある旨供述している。)。

(三)  しかしながら、1 成立に争いがない乙第二、第三号証および証人蕪木義明の証言によれば、原告馬場数馬は、当初本件土地の売却代金は九、七八〇万円であり、そのうち六、九三〇万円を都筑一江に渡した旨主張し、本件各更正処分がなされる前の調査段階の昭和三八年六月一二日には、都筑一江には六、九三〇万円以上の金額を渡したことはない旨の上申書を東京国税局長あてに提出し、また、昭和四〇年七月一六日同局長あてに提出した本件各更正等処分に対する審査請求書においても、本件土地の売却代金は九、七八〇万円であり、残代金の最終支払日には四、〇〇〇万円の小切手を受領したほかに二、三〇〇万円の現金を受領したことはない旨記載していたが(もつとも、必ずしも明確ではないが、残代金の最終支払日に四、〇〇〇万円の小切手のほかに何がしかの現金をも受領したかのような記載もされている。)、その後、主張を変更し、本件土地の売却代金が一二、九八〇万円であることを認めるに至り、これより立退料や仲介手数料を差し引いた金額は全部都筑一江に渡した旨主張するに至つたことが認められ、この認定を覆えすに足りる証拠はない。

2 原告馬場数馬作成にかかる都筑一江あての昭和三八年七月二日付の前記書面については、(1)前記甲第四号証の三および乙第四号証によれば、右書面(以下、「数馬の回答書」という。)には「扨而手取六千九百万円の仮契約を作成した当時、貴殿は既に弐千万円宛二回に四千万円也を受領せられている筈ではないですか、その二回目の弐千万円は御尊母様御危篤の際であつた筈であります」と記載されている部分があるところ、成立に争いのない甲第四号証の二および原告馬場数馬本人尋問の結果によれば、右手取六、九〇〇万円の仮契約とは昭和三五年一二月一二日に都筑一江と陳炎山との間に結ばれた売買予約を指すものであることが認められ、本訴における原告らの主張によつても同日にはいまだ本件土地の売買代金は支払われていないというのであるから(別表(三)参照)、数馬の回答書中の前記記載部分は真実に反する疑いが濃いというべく、(2)前記甲第四号証の三および乙第四号証によれば、数馬の回答書には「而して昭和三十六年五月十日最後に受渡されるべき額が六千九百万円のところ、陳が立退者等に支払はざるを得なかつた金額参百万円と、契約期日を遅延したことによる特約控除金弐拾万円喜文の立退料参拾万円を控除することに妥協したことは報告の通りで、当日受渡を了した金額は小切手四千万円の外現金で弐千五百五拾万円であり、之はそのまゝ御渡したものであります。」と記載されている部分があるところ、原告馬場数馬はその本人尋問の際都筑一江へ送つたものには右二、五五〇万円を二、〇三〇万円に正した旨供述しているが、六、九〇〇万円から三〇〇万円、二〇万円、三〇万円および四、〇〇〇万円を控除すれば二、五五〇万円となること計算上明らかであるから、これを二、〇三〇万円と訂正すればその算出根拠が不明確となり、他方、訂正前の二、五五〇万円では、昭和三六年五月一〇日に都筑一江に小切手と現金合わせて六、五五〇万円を渡したということになり、原告らの本訴における主張(別表(三)参照)と一致しないこととなり、(3)前記乙第四号証、成立に争いがない甲第四号証の一および乙第一号証ならびに原告馬場数馬本人尋問の結果によれば、数馬の回答書は都筑一江が原告馬場数馬にあてた昭和三八年六月一〇日付内容証明郵便による通知書に対する回答書であるというのに、同原告は弁護士を業としているにもかかわらず(このことは当事者間に争いがない。)、数馬の回答書を内容証明郵便にもせず、また、配達証明をもとつておらず、しかも、内容的にみて本件各更正等処分に対する審査請求事案の審理に重要な意味をもちうる文書であるにもかかわらず、昭和四二年八月一〇日になつて原告馬場数馬はこれを東京国税局長に提出しており、(4)証人小路益弘および同蕪木義明の各証言ならびにこれにより成立が認められる乙第七、第八号証によれば、都筑一江の方では数馬の回答書を受領したこともなく、また見せられたこともない旨述べていることが認められる。

(四)  他方、前記甲第四号証の一、乙第一号証、同第七、第八号証、証人小路益弘の証言により成立が認められる同第六号証、都筑一江の署名押印部分については証人都筑一江および同小路益弘の各証言により成立が認められ、その余の部分についてはその方式および趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるので真正な公文書と推定すべき同第九号証、証人都筑一江、同小路益弘および同蕪木義明の各証言を総合すれば、都筑一江は、同人が原告馬場数馬に昭和三五年八月ごろ本件土地の売却方を委任するにあたつては自己の手取金額を約七、〇〇〇万円にしてほしい旨依頼したのみでその余はすべて同原告に任せたものであり、その後、同原告より別表(二)のC欄記載のとおり合計六、九三〇万円を受領し、それ以外には受領していないが自己の希望どおりになつたので、満足している旨を一貫して述べていること、都筑一江は原告馬場数馬に対し昭和三八年六月一〇日付内容証明郵便にて、本件土地の売買に関しては右原告より六、九三〇万円を受領したのみであるが、この金額に満足しており、今後ともこれ以上の請求をしない旨通知していること(右通知の事実は当事者間に争いがない。)がそれぞれ認められる。

(五)  前記乙第三号証に証人都筑剛および同都筑一江の各証言ならびに原告馬場数馬本人尋問の結果を総合すれば、原告馬場数馬と都筑一江とは遠い親戚関係にあたり、従来より都筑一江は仕事の上で右原告の世話になつていたこと、本件土地の売買については、所有名義が第三者のものになつていたり、本件土地を第三者が占有しているなど複雑な権利関係が随伴しており、右原告の努力によつてこれらがすべて解散し、本件土地の売買が完了したこと、しかるに、本件土地の売買については何ら報酬や手数料支払いの約束がなかつたこと、本件各更正等処分がなされた後に、都筑一江の弟であり原告馬場数馬とは親しく親戚つき合いをしていた都筑剛が、右原告と都筑一江との間に立つて円満に税金問題を解決しようと努めたが、うまくいかず、結局、都筑剛の力の及ぶ範囲内で、同人が代表取締役をしている会社からの右原告に対する顧問料を増額したり、あるいは都筑一江を強硬に説得して見舞金として若干の金員を右原告へ渡させる程度にとどまつたが、都筑剛が右のように努力したのは、本件土地の売却が右原告の努力によつて実現されたものであり、また、都筑剛が右原告にいろいろ世話になつていたため右原告の手助けをしたいという気持からであつたことが認められる。

(六)  以上(二)ないし(五)に述べたところを比較対照して考えるに、原告馬場数馬が昭和三六年五月一〇日都筑一江に対し合計六、〇三〇万円を支払つた旨の原告らの主張に副う前記(二)の各証拠は、前記(三)および(四)の各証拠およびこれにより認められる各事実に照らし信用できないものというべく、結局、前記(一)の事実に前記(三)ないし(五)の各事実を総合すれば、右五月一〇日には四、〇三〇万円のみが都筑一江に支払われ、二、〇〇〇万円は原告馬場数馬の取得するところとなつたと認めるのが相当である。

ところで、右二、〇〇〇万円および前記認定の粘玉世へ支払つた仲介手数料三〇〇万円は、本件土地の譲渡による所得であるが、本件土地は原告馬場数馬所有のものではないので、右所得税は所得税法九条一項八号に規定する譲渡所得にはあたらないというべく、また、弁護士である右原告が本件土地の売却方の委任を受け、その一環として前記認定のように本件土地に関する複雑な権利関係を解決した行為の中には弁護士業務としての性質を有するとみられるものもないではなく、したがつて、実質的にみれば前記二、三〇〇万円の所得中には右弁護士業務としての性質を有するものに対する報酬ないし手数料的な性質を有するとみられる部分もないではないが、前記認定のとおり右原告と都筑一江との間においては本件土地の売買に関し報酬ないし手数料の約束はなかつたというのであるから、前記二、三〇〇万円の所得は全体として右原告の弁護士業務より生じた所得ではないと解するほかなく、結局、所得税法九条一項一〇号に規定する雑所得にあたると解するのが相当である。

してみれば、右二、三〇〇万円より粘玉世に対して支払つた仲介手数料三〇〇万円を必要経費として控除した二、〇〇〇万円が昭和三六年中における原告馬場数馬の雑所得金額ということになる。

三  以上のとおりであるから、主たる所得者である原告馬場数馬に確定申告にかかる所得以外に雑所得二、〇〇〇万円があるとしてした本件各更正等処分はいずれも適法であるというべく、その取消しを求める原告らの請求はいずれも理由がないのでこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九三条一項本文を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 高津環 裁判官 上田豊三 裁判官 慶田康男)

別表(一)

<省略>

別表(二)

<省略>

(注) 単位は万円。なお、AおよびD欄中※印のついた一、六五〇万円は陳炎山より立退者へ直接支払つたものである。

別表(三)

<省略>

(注) 単位は万円。なお、AおよびD欄中※印のついた一、六五〇万円は陳炎山より立退者へ直接支払つたものである。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例